あぁ、桜橋 第3夜 楓viwe

(だからネタバレだって言ってるじゃん。)



検査の結果はあまり喜ばしい物ではありませんでした。
先生は、「前回と変わらないよ。」とは言ってくれたけど、
出された薬の数が、それは嘘だと云う事を知らせていました。
徐々に身体が壊れていく事を、改めて知る事。
こんな事に何の意味があるんだろう?
検査のたびにいつもこんな事を思います。
正直に言うと、わざわざ現実を突きつけられる為だけに、
電車に乗って遠出をするのは苦痛でした。
窓の外ではポツポツと家の明かりが灯り、右から左へどんどん流れていきました。



くれは「楓?あっ、楓?ちょっと、楓! あっ、すいません、降ります。降りますから。」



沢山の人が降りる駅、私もその流れにのり降りました。
分っていたとは言え、現実の思い知らされるのはツライです。
あの日、暮葉ちゃんに出会わなかったら楽になれたのかな?って思いもよぎります。
どうすれば、この気持ちが無くなるのだろう?最近はよくこんな事を考えます。


くれは「居たッ!かえで〜〜。」


駆け出す暮葉




なんだか、私を呼ぶ声が聞こえた気がしました。





くれは「あぁっ。」


ドン


男「気をつけろよ。」
くれは「あっ、すいません。  イッタ〜〜イ。」
かえで「フッハァハァハッ。(笑」
くれは「あっ、楓。」
かえで「ホントぶつかったり、転んだり。そういうキャラですよね〜。(笑」
くれは「楓..。」


雑踏


くれは「心配したよ〜。」
かえで「こっちの台詞ですよ。駅でぶつかったり、転んだり。(笑」
くれは「だって、あたしが何回も呼んでも気付かないんだから。」
かえで「そうでした?」
くれは「そうでした!」
かえで「まっ、そういうキャラなんですよ。ハハ。」
くれは「ったっく〜。それにしてもさっきの楓、なんか雰囲気違ってた。」
かえで「えっ?」
くれは「なんつうのかなぁ〜?楓なのに、楓じゃないみたい。生きてる感じがしなかった。」
かえで「ん〜〜〜、っま、人生いろいろって事ですよ。」
くれは「なによそれっ!」
かえで「それよりも暮葉ちゃん。」
くれは「また、ちゃん付けだしぃ。」
かえで「今日は何が悲しくて?」
くれは「悲しくないよ。」
かえで「えっ?悲しい事があって、泣きたいからココに来たんじゃないの?」
くれは「むしろ嬉しい。」
かえで「うぁ、奇跡的。」
くれは「あんたね〜、バカにしてない?」
かえで「してない、してない。」




くれは「いやっ、この間、楓が言ってた事の意味が、少しだけ分ったような気がして。
    悲しいことがあるから笑うんだ。それは目を閉じてから初めて見えるって。
かえで「ふむ、ふむ。」
くれは「それって、あれだよね、こう、目の前に有るけど普段は見えないまぶたみたいなモンで、
    つまり、あれでしょ? こうやって、私たちが生きてる事の有難さというか、
    生きてる奇跡に気付け!みたいな。事でしょ?」
かえで「ふむ、ふむ、ふむ。」
くれは「小さなことで、ウダウダ悩んで泣いてると それに気付かないよって。
    そんな時は目を閉じて、自分の内面を静かに見つめろ。みたいな。そしたら笑える。みたいなね。」
かえで「良い事言いますね〜。暮葉ちゃん。」
くれは「そうそうそう、あっ?はいっ?」
かえで「今のメモっとけば良かったな〜。もう一回言ってくれます?」
くれは「もう一回?って、だって、楓が言ったんじゃない。」
かえで「あたし、テキトウに言ったもんで。」
くれは「はいっ?」
かえで「いやっ、なんか雰囲気で あんまり考えずに。それをしっかり受け止めた暮葉ちゃんはエライ!」
くれは「なによそれ!すごい真剣に考えて損した。」
かえで「あっ、怒ってる。(笑」
くれは「怒ってるわよ。バカにされたんだもん。」
かえで「一歩前進じゃないですか。」
くれは「一歩前進?」
かえで「そう、この間までは泣いてるだけだったのに。今日は嬉しかったり、怒ったり。フフ。(笑」
くれは「ハハッ(笑 
    って、アホか。ボケぇ。」