三億円少女ビギニング
昭和43年12月10日以降あまり日記は書かれてはいなかった。
年に数日、おばあちゃんが逝く年まで、ゆっくりゆっくり時を刻んでいた。
読み進めていくと私の生まれた日の日記を見つけた。
かわいい女の子。優しい子になりますように。
一つの希望と書いて一希。この子この名前を託そう。
純弥さんは最初は複雑そうな表情をしたけれど、
すぐに笑顔で良い名前だといってくれた。
ありがとう 純弥さん。
三億円少女ビギニング
私の中のおばあちゃんの思い出は変なイントネーションで言う「ありがとう」って笑ってるところ。
...遠くを見つめて悲しそうな横顔。
小さな頃、私がどうしたの?って聞くとなんでもないよって少し微笑んで答えた。
ちっとも何でもなさそうじゃないのに。
でも、今ならその訳が分る。
一希の傍らには1冊の古い日記帳があった。