思い出

9/25 20:33 東京国際フォーラム、ホールA      

アンコールラストの曲『I&YOU&I&YOU&I』が終わり4人が舞台裏にさがります。
途中、涙を見せる場面はあったが、最後は明るく楽しい雰囲気のまま締めくくられました。
場内は割れんばかりの拍手と共に、終わらないタンポポコール。
客電は点き、終了のアナウンスが流れても一向に収まらないオーディエンス。
きっと、みんなルール違反だとは分かっていても、どうしても声を出さずにいられなかったのでしょう。

5分ほどして、再び客電がおち、舞台の下手をスポットライトが照らします。

『皆さ〜ん、(圭織) どうもありがとう。(4人)』 の声
次の瞬間オーディエンスの大歓声。
そして、スポットライトに照らされたのは
ブルーベルベットのシンプルなロングドレスを身に纏った飯田さん。
ピンクのフリルのついた可愛らしいドレスの加護さん。
背中が大きく開いた深紅のミニのドレスの矢口さん。
深みのあるグリーンの大人っぽいデザインドレスの石川さん。   

みんな一歩一歩踏みしめるようにセンターまで歩きます。
センターにみんなが揃うと、一回みんなで顔を見合わせて、微笑みあってます。

圭織 『 皆さん、今日はホントにどうもありがとうございます。
 1998年11月に私と、矢口と、彩っぺで始まったタンポポなんですけど、
     2000年の1月に彩っぺが卒業して、7月に石川と、加護が入ってきて2年ちょっと。
    
     今日で、私と矢口と加護が卒業して、
     明日からは、石川を中心に、柴田、紺野、新垣でまた新しいタンポポに生まれ変わります。』

矢口 『そうだね〜、ホントいろいろあったけどさ、今日でうちら最後なんだよね〜。』

圭織が進行し、3人が口をはさむ形で、みんなが様々に想いを紡いでいきます。
みんなの話をオーディエンスは一言も聞き逃さないように固唾を呑んで聞き入っていました。
MCの最中、ステージ後方では、次の曲の準備に取り掛かっていました。
暗い空間には5つの椅子と、グランドピアノ、ハープ。
上手からは、奏者が登場。それぞれの手には、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、フルート。

圭織 『それでは、本当に最後の曲聴いてください。』
梨華 『あっ、飯田さんちょっと待ってください。』
圭織 『なによ、石川。最後の最後に。』
梨華 『今日はですね〜、スペシャルゲストをお迎えしてるんですよ。 どうぞ〜。』
微笑むのは石川のみ、圭織、矢口、加護はキョトンとしています。

そして、ステージ・センターにスポットライトが集まります。
そこに照らされたのは、黄色いドレスに身を包んだ、石黒彩の姿。

会場中一瞬何が起こったのかわからずにざわめきだし、ただ微笑んでるのは、石川と石黒の2人だけ。
それともう一人、ソデで見ていたつんく♂だった。
3人とも『何で?』という感じの表情に続いて、
真っ先に涙を流しながら笑ってたのは、矢口だった。思わず『何で?』つぶやいた言葉がマイクに乗ってしまったくらい。
圭織はただボロボロと涙をこぼして石黒に歩み寄った。
会場もやっと、中央から登場した人物を確認して、巻き起こる大歓声。

石黒は『何泣いてんのよ。』と言ってポンポンと2人の肩を軽くたたきました。
矢口 『何で〜〜???』
マイクを通さない会話が一言二言。
石黒は石川と顔を見合わせてイタズラっぽく笑った。
そして、泣き止みそうに無い圭織の頭を、子供をあやすようになでています。
加護はまだ状況が把握できないのか、キョトンとしています。

全てはつんく♂の企みだった。
アンコール後1度客電が点いて、終了のアナウンスが流れるのも、
石黒がホントのラストの曲の為に再びステージに上がるのも。

これは一つの賭けでもあった。
終了のアナウンスで、観客が帰ってしまっては用意していた物は全て無駄になってしまう。
この博打のような行為に、舞台監督は難色を示していた。
しかし、つんく♂は信じていた。タンポポのことをそして、タンポポを愛してくれているファンのことを。
もちろん、十分、布石は打っておいた。
アルバムのラストに収録されている、G・S・Verもアンコールまでに入れていなかったのは
全てはこの瞬間の為だった。
メンバーにはWアンコールの事は告げていた、賭けである事も含めて。
石黒の参加を伏せている為に、G・S・Verは別々のリハーサルを行い、
今日、会場でもちゃんと通しではやらなかった。
みな一様に不安そうだったが、石川だけが終始ニコニコしていたのが印象的だった。

そしてつんく♂の目論みは見事に的中。
これは、タンポポ1・2の終わりへのせめてものはなむけだった。タンポポにしても、ファンに対しても。
石黒の登場は一部のスタッフと、石川のみ伝えられていた。
この紹介を石川にしたのは、これからのタンポポを託す為。
飯田や矢口に頼らずに、これから進んでいくために。

石黒がステージに現れて、この間、3分。
いつまでも鳴り止まない歓声を制したのは石黒だった。

石黒 『えっ〜〜っと、こんばんは、旧姓、石黒彩です。   帰ってきたよ〜〜〜!』
会場は割れんばかりの歓声。   
石黒 『今日だけだけどね。(笑)』
その一言に、場内は爆笑に包まれた。
娘。時代のトークはいまだ健在のようだった。

梨華 『驚きました?』
石川は、観客にもメンバーにも質問するように言った。
矢口 『当たり前じゃん。さっき楽屋で会ったときは何にも言ってなかったのに。』
圭織 『そうだよ、ビックリしたよ〜。』 圭織は鼻声で答えた。

ボーっと石黒を見つめてる加護に
梨華 『亜依ちゃん?』 
加護 『んぁ、ビックリしましたよ?よぉ。』
会場中で笑みがもれた。

石川 『じゃあ、改めて紹介します。初代タンポポのメンバー、石黒彩さんです。』
石黒は、大きく手を振って深く頭を下げた。
大きな拍手が会場中を包む。

少し間を置いて、石川がメンバーの方に向いて、
梨華 『皆さん、落ち着きましたか?』
矢口 『自分ばっかり冷静でムカツク〜〜。(笑)』
石川は微笑みながら
梨華 『じゃあ、飯田さん、後お願いします。』

立ち位置は、ステージに向かって左から、石川、加護、石黒、矢口、圭織 

圭織 『いろいろあったけど、ホントに今日、最後の曲になります。
     私たち5人の思いがたくさん詰まったこの曲、』
5人 『「たんぽぽ・Grand Symphonic Version」聴いてください。』

みんなで顔を見合わせて微笑みあうのを合図にするように、フルートの旋律から始まります。
その音に重なるように、バイオリン、ハープ、ピアノと幾重にも音が積み重なっていきます。
一瞬にして、清廉かつ、荘厳な雰囲気がホール全体を支配します。
メンバー全員も、少し緊張しているようです。


『朝の日差しちょっと眩しいけど 始まるわ この場所であなたとの 新しい夢とか未来とか 胸がトキメク』  圭織

圭織のしっかりした歌い出しに矢口が安心して繋げます。

『何か信じてほんの少しづつ その想い伝え合い  夢に向かってゆくわ 明るい未来へ』 矢口
                                圭織と石黒の声が矢口の声に重なります。

『どこにだって ある花だけど 風が吹いても負けないのよ』  加護
石黒、圭織 矢口の声が加護の声を優しく包み込みます。

『どこにだって 咲く花みたく 強い雨が降っても大丈夫 』 石黒
久しぶりに3人のオリジナルのハーモニーに自然と笑みがこぼれます。

『ちょっぴり「弱気」だって あるかもしれないけど』   矢口
                    歌い終わった矢口は石川の方を見つめます。ちょっと心配そうに。

『たんぽぽの様に光れ』 石川

自分の最初のパートは終わったが、2コーラス目の歌い出しへ向けて、まだ表情はかたい石川。

『熱い視線もっと感じたい 少しだけ背伸びした あなたとの出来事は』 石川

やっと緊張する場面を終えてホッとする石川を見て、石黒が微笑みます。
『いつでも何でも 胸が高まる』 石黒

唄い終わると圭織の方を見る石黒、圭織も石黒のほうを見てアイコンタクトを交わしています。
『独りぼっちじゃ ちょっと辛いけど この気持ち伝え合い』 圭織 

『愛を信じて行けば いつかは未来へ 』 加護 
加護の声に

『どこにだってある花だけど 世界中に夢を運ぶわ』 矢口 
矢口の声に

『どこにだって咲く花みたく』 石川 
石川の声に他のメンバー全員の声が重なります。

『たとえ悲しくっても大丈夫』  石黒 
さっきまでと違ったシンガーの顔に変わる石黒。 

『信じ合い支え合って 希望に変えていくわ』 圭織
右手のひらを上に向け、少し上のほうを仰ぐ圭織。

『たんぽぽの様に強く 』 矢口
右手をギュッと握って、胸に持って行き、少しうつむいて、目を閉じて歌う矢口。
そう、祈りを捧げているかのよう。

弦楽四重奏の流れるようなストリングスが場内に響き渡ります。

圭織は、ホールの遠くを見つめていて、
矢口は握った手を鼻頭に持って行きます。心なしか瞳も潤んでいるようです。
石黒はみんなを母の面持ちで見ています。
加護は終始ニコニコしていて、楽しくてしょうがないといった表情。
石川は今にも泣き出しそうです。
その表情を見た加護は右手を石川に差し出します。
石川はマイクを持ち替え、左手で加護の手を握りました。
そして今日で一番と思える笑顔を見せてくれました。


『どこにだってある花だけど』  タンポポ2ndユニゾン

『風が吹いても負けないのよ』 圭織

『どこにだって咲く花みたく』  タンポポ1stユニゾン

強い雨が降っても大丈夫』 矢口

『ちょっぴり弱気だって 』 石黒

『あるかもしれないけど 』 梨華・亜依

伴奏がいったん途切れます。



そして...

5人のユニゾンで、

『たんぽぽの様に光れ』 

ピアノの音が響き、弦楽器のストリングスと共に、
鈴を震わせるような、5人のフェイクが入ります。
その長く、永遠に続くと思われた演奏がピアノの音で終わりを告げました。
その瞬間、場内は水を打ったをような静寂に包まれました。








パチ パチ パチ



一点から広がった拍手はあっという間に会場中に広がります。
みんな声も出せずに、ただ立ち上がって、両の手を頭の上の掲げて、大きく拍手をしていました。

その光景を見たタンポポのメンバーは満足そうに微笑んでいました。

圭織が一歩前に出て、大きく一つ深呼吸をした。
その光景で、ホールに再び静寂が訪れた。

圭織 『今日は、私たち、タンポポのライブに来てくれて、ありがとうございました。
     寂しくないって言ったら嘘になるけど、最後にいいライブが出来てとてもよかったです。
     でも、卒業しても私は「タンポポです。」って言い続けます。(^^)
     今日はどうもありがとう、タンポポ飯田圭織でした。』

矢口 『明日からは石川を中心とした、新しいタンポポの応援もよろしくお願いします。
     そして、時々は私たちの“タンポポ”のことも思い出してくださいね。  
     ほんとに今日はどうもありがとう。 タンポポ矢口真里でした。 』

加護 『タンポポに入れてとても嬉しかったです。どうもありがとう。 タンポポ加護亜依でした。』

石川 『明日からは新しいタンポポとして、飯田さん矢口さんから教えてもらった事を
    紺野、新垣、柴っちゃんに伝えていって、今までに負けないくらい素敵なユニットにします。
    今日はどうもありがとうございました。タンポポ石川梨華でした。』

石黒 『私の都合で、急に卒業してしまって、圭織、矢口に辛い想いさせちゃったかもしれないけど、
     こんな素敵なライブが出来るまでになったんだね。ほんとに感心したよ。
     いきなりの卒業で、応援してくれた人たちにちゃんと挨拶できなかったのが心苦しかったんだけど、
     今日、こんな素敵な舞台を用意してくれた、メンバー、つんく♂さん、スタッフさん、
     そして、見に来てくれたみんな、ほんとにありがとう。 タンポポ石黒彩でした。』


みんなで手をつないで、会場に向けてお辞儀をします。
会場もそれに呼応するかのように、大きな拍手で応えます。


満面の笑みと、大きく手を振り、ステージ、センターから舞台を去るメンバー。
口々に感謝の言葉を述べていました。
最後にステージを後にした圭織は、『みんな気をつけて帰ってね、今日はありがとう。』
という言葉を残してステージをあとにしました。


     A tradition is not finished.
              It continues to the next generation.



2年前の今日、横浜アリーナで2期のタンポポが終了してしまいましたが、
なんか、キッチリ線引きがしたくて、自分の中で勝手に書いたお話です。
最近ハロショ行ったら、FC会員特典のトレカにタンポポのが有ったし思い返せばそんな日だったので、ネタも無かったのでageてみました。